祈るように踊る  原 キョウコ

2018.2.6  Chikako Natsui
/ / / / / / / / / / / / / / / / / / / / /

初めは愛想のない、冷たい印象の
先生だった。だが、会話を始めると
内面の優しさがじんわりじんわりと
伝わってくる。

第一印象と第二印象がガラリと変わり、
少々拍子抜けした。

自他の境界線をしっかり保ちながらも、
関心をもってこちらに接してくれる。
それが大変ここちよい。

さすがに病院などで臨床の
ダンスワークショップを開催されている
先生だけある。理論と実践がしっかりと
クロスされ、それが自信となって伝わる。

芸術分野のダンスというアプローチで
身体の声を聴き、そこから深い気づきと
変容をもたらすのがダンスムーブメント
セラピーだ。

だが、その関心は人間だけに止まらない。

自然や神社で祈りの舞を捧げるという
シャーマン的な活動もしている。

ひとを愛し、自然を愛し、神を愛し、
芸術を愛する。

そしてそれらすべてを「原キョウコ」という
舞踏家であり、ダンスムーブメントセラピストが
「つなぎ」「表現」する。

シャーマニズムとは何かを知る、
素晴らしい魂との出逢いだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

誰かのために祈る。
何かのために祈る。

知っている誰かのために、
知らない誰かのために。

なくなったひとのために。
なくなった動物のために。

生き延びた方のために。
生き延びた動物のために。

汚染された大地、海、空気などの自然のために。
100年後の地球のために。

and more…

ことばと祈りのすべてを我がこととして。

そして、
すべての場の平和と、
これからの希望のために、祈りましょう。

今までの方法ではない
新しい何かを感じ、見つけ、
その道を確かなものにするために。
新しい自分の道のために。
そして自分自身のために。
(原キョウコ ダンスセラピーラボより)

現在の活動のきっかけは?

以前は俳優をやっていたんですよ。
その活動の中で仕舞やジャズダンス、
タップダンスなどの踊りをやっていました。

30歳手前くらいでしょうか。
役者として行き詰まった時期がありまして、
「さて、この先どうしよう・・・」と思って
いたとき、山海塾という舞踏グループを
主催されている岩下徹先生のワークショップに
参加しました。それが、私にはものすごい
衝撃だったんです。これまで舞台で経験
したことのない、即興で踊るということを
されていたからです。舞台の場合、
まず振り付けがありますから、その通りに
踊ります。

だから、岩下先生のワークショップを参加
させていただいた時に、
「身体ってこんなに自由になれるんだ!
綺麗に動くことを意識するのではなくて、
身体が動きたいように動いていいんだ」
ということに感動しました。
これまで私がいた世界とは対局。
即興で踊るということ、
身体そのものからでる動きが面白くて、
「これだ! 私がやりたいのは!」と
直感的に思いました。

それがきっかけで病気の方も含め
自分のできるセッションを提供したいと思い、
臨床心理の勉強を始めました。

現在の活動をスタートされたのは?

「ダンスセラピーワークショップ」を
スタートさせたのは、1997年からです。
ワークショップをやりながら、
臨床では大学病院を始め、病院、
クリニックや企業様でもダンスセラピーを
させていただいています。

病気の方にダンスセラピーですか?

ええ。実をいうと、私の実家は内科・
小児科の病院なんです。
それもあるかもしれませんね。
病気になるって本当に辛いですよね。
他のことが何も手につかなくなってしまったり、
それまでの生活環境がガラリと変わることも
あります。小さいころからそういうことを
身近に見てきて、病気になった方が少しでも
楽になるように、これまでやってきたことを
通して私に何かできないかと無意識に考えて
いたのだと思います。

また私自身も10年前に乳がんという大病を患い、
それを乗り越えてきています。
自分の経験からも、こころ安らかに
健康でいることの大切さを実感しています。
そういう方が自分の身体と折り合いをつけながら、
健康に生きていくことをサポートする活動を
していきたいと思っているんです。
私の人生のすべてを引っ括めて「医療」「芸術」
「教育」をミックスさせたメソッドを作りたいと
考えるようになりました。

現在も医療の現場にダンスセラピーを取り入れる活動を?

ええ。病態によってもアプローチは違ってきますが、
「身体の感覚を取り戻す」ことを大事にしています。
精神疾患の方ですと「イメージする」ということが
状態によっては危険な場合もありますので、
まずは、身体を動かし、自分の身体の重さ、呼吸を
感じることで、意識と自分の身体をつなげる作業をします。
その過程において、地に足を着ける、グラウディングを
しっかりすることを身体に覚えさせていきます。

一般の方のワークショップと内容は同じですか?

グラウディングを大切にすることは一緒です。
これは本当に大切なことですから。
どんなワークショップでもグラウディングについては
意識的に行なっています。

その時々の参加者によっても変わってきますが、
一般の方の場合にはイメージをとり入れます。
多くの人は、日常にがんじがらめになって
生きているので、五感で何かを感じとる力を
使っていないんです。
だから、身体を動かすことで、違う視点から
自分自身を感じてもらうというワークをしています。
そして、ご自分の身体をどのくらい理解して
付き合っているのか、意識と身体が
つながっているのかを参加された方
お一人おひとりの状態をみて、アドバイスを
させていただいています。

ワークショップや臨床活動だけではなく、
自然の中や神社さんで踊ることもされていますね。
そういった活動はいつくらいから始められたのですか?

きっかけは、東日本大震災でした。
それ以前にも長野の友人宅を訪れて自然を身近に
感じる活動はしていたのですが、
あの震災は本当に衝撃でした。
大勢の方が亡くなって本当に辛かった・・・。
私にとって本当に大きな出来事でした。

原発事故。
人間が自然を破壊して汚してしまった。
それが元の姿に戻るには長い長い時間が
かかるでしょう。もしかしたら、もう戻らない
かもしれません。
それを考えると、人間はなんて大きな罪を
犯してしまったんだろうと思うんです。
そして、自分が人間であることの罪悪感をもちました。

「何かしないではいられない」

そう思って始めたのが「祈りのカフェ」の
ワークショップでした。
2012年1月に東京でスタートしました。
踊りは祈りそのものだと思っています。
あんなに大きな災害であっても、ひとは時間が
経つとそれを忘れてしまいます。
だから、祈るための時間を作りたかったんです。

でも何度かそのワークショップをやるうちに
「祈る」ことは「踊り」を通して様々な場でできる、と
思うようになっていきました。

知人から「キョウコさんが傷ついた
自然のために踊りを捧げている夢を見た」
というメールをもらい、
それからは、一人で自然の中で踊り、
祈りを捧げる活動を始めました。
それも110回を超えました。

どんな場所で祈りを捧げているのでしょうか?

場所はその都度変わります。
自然のスピリットから呼ばれた場所に
行って踊ります。「次はここに行く!」と
決めているわけではないんです。
ふとした瞬間の直感に導かれて、そこに行きます。
だから、自然のスピリットに
呼ばれているのだと思います。
無意識に身体が動いて踊り始めたところが
その場所になります。

こういう踊りをしようかとか計画も何もありません。
その場所に立ち身体が動きたいように動く。
何も考えず、感情も一切ない。
ただ、自然のスピリットと一体となって動き、
それが祈りとなります。

踊ること。それが祈りなんです。

ダンス経験のない人がワークショップに
参加しても大丈夫ですか?

大丈夫です。
さっきも言いましたが、現代人は頭で
考えすぎです。
思考重視で、視野も狭い。
身体を動かしていると、思いがけず、
フーッと大きな気づきを得ることがあります。
直感が働くんです。
それは、頭でどんなに考えていてもでない答え。
思考を離れて、身体の感覚を研ぎ澄まし
観察をしていると、それはやってきます。
そして、踊りを通して気づいたことを日常に
持ちかえって欲しいと思うんです。
気づきによって得たものは、これまでの世界の
見方を大きく変えます。
感情、行動、自分の生活がどんどん変わって
いくのが実感できます。

特に、毎年夏に開催している女神山での合宿では、
豊かな自然の中、裸足で外を歩くこともあります。
屋内にいる時とはまた違った気づきがあります。

自然と一体感を感じながらハートが開いていく
感覚を味わいます。

ひととひと
ひとと自然

エネルギーの交流、こころの交流がなされます。

合宿では、自然から多くのものをいただきます。
それが一方的にならないように、
自然に対して自分が何を還せるのかも
見つけて欲しいと思います。

最後にメッセージをお願いします。

目に見えない世界に関わるということは、
すべてを信じないということも大切だと思います。
今自分が身をおく世界の中で最善を尽くしながら、
でも、もう一方では、それが本当にそうなのかと
いうことを疑う目をもつことも大事です。
見て、分析する。
両輪があってこそ、安心していられる世界だと思います。

 

原キョウコ

和光大学人文学部、劇団青年座専科卒業。
俳優としての活動の後、仕舞、ジャズ・ダンス、タップ・ダンスなどを経て
白桃房ワークショップにて舞踏を、岩下徹ワークショップにて即興を、
柴崎正道にコンテンポラリーを学ぶ。
コンテンポラリーと舞踏、日本の身体技法を融合させ、
「指輪ホテル」「nest」「sKirt」などの舞台や、ソロでの
パフォーマーとして活動。
97年より「原キョウコダンスセラピーワークショップ」を主催。

臨床でのダンスセラピーは
96~’98年 東海大学病院(開放病棟)
97~98年 医療法人青渓会駒木野病院(アルコールリハビリ病棟)
98~03年 北青山診療所(カウンセリングを含む個人セッション)
00年~05年 めだかメンタルクリニック(デイケア)
08年~11年 医療法人青峰会くじら病院
においてグループ及びカウンセリングを含む個人セッションを行う。

2011年より都内の精神科クリニックでダンスセラピー担当。
東京、大阪、仙台、岡山などでWSを開催。
(原キョウコ ダンスセラピーラボより)

原キョウコ ダンスセラピーラボ
Facebook
Twitter